有限会社藤里木工所

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有限会社 藤里木工所 http://iwate.info.co.jp/IwayadoTansu/ 岩手県奥州市江刺区田原字蟹沢 185

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■岩谷堂箪笥の始まり
江戸時代の三大飢饉(天明、亨保、天保年間)で、最も被害が大きかったのは天明の飢饉。これは天明2年(1782年)の大不作から始まり、翌年、浅間山の噴火によって生じた冷害も続いたことから、全国的な大飢饉となりました。特に東北地方の弘前藩(青森県)では2万人もの餓死者が出たといいます。全国各地で一揆などの暴動が発生し、幕府や諸藩の領国経営は窮地に立たされました。
当時、岩谷堂は、約5,000石の仙台藩岩城村将(いわきむらまさ)公が領主。村将公は飢饉の悲惨な状況を目の当りにして、米作にだけ頼る領地の経営に限界を感じ、その改革として、車箪笥や長持の製作に乗り出したのです。これが岩谷堂箪笥の始まりといわれています。漆塗りは家臣の三品茂左衛門(みしなもざえもん)が、鉄製の彫金金具は徳兵衛という鍛冶職人が考案したと伝えられています。

岩谷堂には、仙台藩祖伊達正宗公の豪壮な気風が伝わっており、その気風は地方の農村にまで及びました。特に中農以上の農家では家屋から家財調度品までも吟味することから、岩谷堂箪笥はその気風を反映した作りとなったようです。

■岩谷堂箪笥の源流
仙台藩の北端に位置し、その一支領地にしか過ぎない岩谷堂において、車箪笥や長持の製作、販売という着想はどこからきたのでしょうか。
そこで思い至るのが、平安時代、豪華絢爛な平泉藤原文化を栄えさせた藤原氏です。岩谷堂は、初代藤原清衡公が平泉に移る前、居館を構えていた地でした。いわば、平泉藤原文化の発祥の地であり、京都より招かれた木工、漆工、金工などの造形的諸工芸職人が存在した地であったのです。
藤原氏の時代から江戸時代の天明年間まで、約600年という年月が流れているのですが、当時の諸工芸技術、技法がこの岩谷堂周辺に受け継がれていたのではないかと考えられます。

岩谷堂箪笥と藤原清衡公の間には、地元岩谷堂に興味深い言い伝えがあります。
話は後三年の役(1083~1087年)の頃のこと。役のさ中、清衡公の館、豊田(とよだ)館で、妻子は殺され、館が焼かれるという事件がありました。清衡公は辛うじて逃れ、後に豊田館を再建するのです。こうした時、地元の工人たちに、建物をはじめ家具なども製作させたと思われます。
建物や家財調度品のでき上がりを見た清衡公は、「おおこれは見事である。そちたちは器用じゃのう、今後も励めよ」と声をかけました。工人一同は感激し、ますます腕に磨きをかけたといいます。

その後、清衡公は平泉に居所を移す際、岩谷堂周辺の工人を連れていきました。居館はもとより、都、平泉の建設にあたらせたといいます。高度な技術を取り入れるため京都の工人も招かれたでしょうから、地元の工人たちは大いに刺激を受け、技術の習得に努力したものと思われます。

仕事は建築関係や家財調度品はもちろん、武器、武具を保管する兜入れ、鎧びつなども製作したことでしょう。この収納箱や頑丈な隅金具打ちびつなどが、後の岩谷堂箪笥の源流であるといわれています。
このように、「岩谷堂箪笥の源は清衡公にある」という言い伝えが地元に伝わっているのです。

■漆
また、岩谷堂周辺を始めとする岩手は、古くから良質の漆を産した地でした。漆は外観の美しさ重厚さのほか、耐久性に効果をもたらします。現在、岩手で伝統的工芸品に指定されている漆器に、浄法寺塗と秀衡塗があります。
秀衡塗は、藤原氏3代目秀衡公に由来するといわれており、江戸時代後期から平泉の隣り衣川村(ころもがわむら)で漆器が作られるようになりました。その製品は、金色さんぜんとして、平泉藤原文化を今に伝えるような印象を与えてくれるものです。このように、秀衡塗の起源も平泉藤原文化にあり、岩谷堂箪笥の重要な要素の漆も、藤原氏に行き着いているのです。

■鉄
さらに、手打ち金具の原料となる鉄についてです。岩手にはもう一つ伝統的工芸品に指定されている南部鉄器があります。その中心の一つが水沢市羽田町(現在の奥州市水沢区羽田町)です。羽田町は岩谷堂に隣接し、岩谷堂とは地理的に縁が深いのです。この鋳物にしても、やはりその起源を藤原氏としており、清衡公が近江国(滋賀県)より鋳物師を招いたのが始まりといわれています。

岩谷堂箪笥の大きな特徴である金具は昔から手打ちであり、鋳物とは違うのですが、江刺市(現在の奥州市江刺区)、東山町(現在の一関市東山町)、気仙地方で産出される砂鉄を使用する製鉄技術という点では同じです。
岩谷堂箪笥にとって重要な漆、鉄の工芸的加工技術、技法も藤原氏が起源というのは、興味深いことです。

古くから、この周辺地域に豊富にあった木材(ケヤキ、桐など)、漆、鉄を利用し、伝統の技術や技法で作られてきた岩谷堂箪笥は、現在にもしっかりと地元に息衝いています。
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